【ワンピース】1098話「ボニーの誕生」が残念な理由【簡易版】

ちょっと執筆に時間が取れそうにないため、Twitterに投稿した内容をそのまま貼り付けて公開します。（時間ある時に加筆修正します）

ワンピース1098話はなんかもうコメントしづらいですね。。

とりあえず、「つまらない」という言葉で評価する内容ではなかったため「残念」な1話であったという結論にしておきます。

• 未完成原稿
• ページ数減
• 胸糞悲劇展開
• 伏線に見立てた強引後付け説明
• それによる設定瓦解（カオス化）

依然何も進まない・何も明かされない、ただくまの悲惨な過去を新キャラを使ってダイジェスト版でお届けし続ける過去編。

特に明かす必要のない（意味づけする必要のない）ポイントばかり伏線に見立てた説明（という名の取り繕い）をしてくる。

そんなことより描くべきことあるでしょと思わずにいられない。

ページ数減かつダイジェスト描写のため、展開に理解も納得も共感もできず、ただ結果だけを押し付けられてる感じ。

革命軍がジニーを助けに行かなかった（行けなかった）理由の描写がないため、あっさり仲間を見捨てた連中にしか見えないし、くまの行動原理も理解できない。

恐らく今はまだマリージョアに乗り込むわけにはいかないという理性的な判断やトップ（ドラゴン）からの命令による苦渋の決断だったのでしょう。

しかしくまは、ボニーのためにはその革命軍をあっさり辞めてしまう。

ジニーが天竜人に攫われたなら、その時点で革命軍を辞めて単身命懸けでマリージョアに乗り込むのがくまじゃないでしょうか。

あれだけ奴隷時代に地獄を味わっておいて、またそいつらの手の元にジニーが堕ちたというのに、よく2年も放置できたな。「妻として」だから優遇されて幸せな生活を送ってるかもしれないなんて頭お花畑なこと思ってたんじゃないよな？

そもそも革命軍の目的は世界政府を倒すことなんだよな？　その敵の手の内に許嫁奪われてよく2年も放置できたな、心の優しいくまさんよ。

ジニーが攫われた時は放置しておきながら、ボニーが生まれたら今度は革命軍をあっさり捨てる。

そのボニーは天竜人の子供としか思えない描き方をされる。せめてくまとジニーの子供であれば理解もできるが、天竜人に孕まされた（あるいは誰が父親かわからない）子供をここまで即座に受け入れる判断ができるものなのか。。

それもジニーを見捨ててまで優先した革命軍を捨ててまで。くまよ、お前の人生の優先順位ってなんなんや。　

作者の手で意志なきロボット化されて都合よく（後付けの辻褄合わせのために強引に）悲劇のヒーロー化させられてるようにしか見えないよ。。

赤ん坊に罪はないので、革命軍を辞めて自分が育てる判断をすること自体はいいとしても、ジニーを助けに行かなかった理由が描かれていないため、くまの心情や行動原理がまるで理解できません。

作画については、個人的には完成間際の未完成原稿が見れたことのレアさもあるので（コミックスでは修正されるでしょうし）、それ自体はそこまで気になりませんでした。

FILM RED特典のカラー描き下ろしを優先した結果、原稿が犠牲になったと考えるとまた別の感情が芽生えますが。

1098話まで読んで、一番落胆するのは、やはりニカの設定追加によって既存エピソードに雑な上塗りが繰り返される状況ですね。。

もうルフィが主人公にすら見えない漫画になってしまった。。

なぜルフィが海賊王を目指す漫画のままじゃダメだったのか。

なぜ奴隷達を笑わせて苦悩から解放させる戦士「ニカ」の実を食べた人間による、世界を笑顔にする物語に変えてしまったのか。。

それってもうルフィの物語じゃないし、海賊王関係ないじゃん。。

そこに神だの伝説の戦士だの乗っかったら、ルフィ1人の力では世界を笑顔にはできなかったことになっちゃうじゃん。

せめて大昔にゴムゴムの実を食べたニカがその能力を使って人々を笑顔にしたとか、奴隷達を解放する戦士となった、という過去があって、同じ実を食べたルフィが海賊王になる過程でニカと同じことを成し遂げた、という描き方であれば受け入れられたのに、体がゴムの性質を持つニカのヒトヒトの実を食べたからニカのように人を笑顔にする戦士になったって、もうベースが変わっちゃってるじゃん。

キャラのアイデンティティが切り替わっちゃってるじゃん。

あたかも空島の時点からニカの設定考えてましたと言わんばかりの追加説明がなされていますが、その設定が過去からあったものとして描けば描くほど、20年以上描いてきたワンピースは、ルフィの冒険ではなく、ニカをベースとした物語だったことになってしまいます。

みんなが読んできたワンピースをこんな作品でしたっけ？

そもそもくまは、そんなに切望してた解放の戦士・ニカの実を食べたルフィとの初見時に、よく首を差し出せなんて言えたな笑　お前が信じた、お前を救ってくれる戦士だぞ？

もちろんくまはゴムゴムの実がニカの実ということは知らなかったのでしょうが、（ジニーを攫って死に至らしめた）世界政府の手下となって、その命令に従って、自分が信じた解放の戦士を殺そうとしたと考えるともう哀れを通り越して間抜け過ぎて笑うしかないよ。。

記憶を失った兵器と化した今、この後ルフィがニカだったことを知ることもなく、ニカに救われることもないというのに、なぜこの過去回想にわざわざ挟む必要があったのか。

もしやこの先ルフィがくまの記憶を戻して「ニカがおれ達親子を救ってくれた」オチでも描くつもりなのか。。

ページ数減について

1097話が12ページで掲載されたことについて、Twitterで以下のような投稿をしました。

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簡単にいうと「ストーリー漫画の1話において12ページは少なすぎて、面白い（満足度のある）1話にも意味のある1話にもならない」ということ。

1話における起承転結の「起承」について、「承」の内容を強引に「転」や「結」にしてまとめるようなものなので、どう描いても中身は薄くなり、あっけなさや肩透かし感の方が強くなってしまいます。

一方、12ページの中に強引に「起承転結」を作ろうとすれば、駆け足のダイジェストとなって感情移入の余白が削られるため、やはり薄っぺらい1話になってしまう。

「12ページでもいいから休載をなくして欲しい」と考える人もいるかもしれませんが、そんなことをやったら本当にワンピースは終わってしまいます。

なぜならその場合、18ページの1話であれば描けた「起承転結」を、

・1097話「起承」
・1098話「起（1097話の転）」「承（1097話の結）」

と分けて描くことになり、本来1097話の「転結」として盛り上がった要素も、1098話の「起承」として描かれることで、その力を失ってしまうからです。

1話としての体裁を整えるには、1098話をいきなり「転」や「結」から描くことはできないため、本来「転」として描くはずだった要素を、1098話の「起」として描くことになります。

こうなると本来の「転」「結」の盛り上がりは確実に失われ、「起」を描く際に無駄なつなぎの説明が必要となるため、テンポも悪化します。

つまり、ページ数を減らした1話で連載を続けると、毎週「転」「結」のない（あるいは本来の盛り上がりが削がれた）1話を延々読み続けることになります。

ゆえに、私はページ数を減らして連載頻度を上げるよりも、休載を増やしてもいいから、規定ページ数で1話1話を描いてほしい。

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さて、実際はどのような結果になったのかというと、「1097話の承結」をまるまるカットするという荒技となりました。正直これは予想してなかった。そこまで雑な進行をするのかと。。違和感や読者の納得感よりも、ただくまが悲劇を味わう展開が描ければいいと言わんばかりの強引な進行。

以下、規定ページ数で描いていれば、どれだけ内容濃く、説得力を持たせて（ツッコミどころを減らして）描くことができたのかまとめてみます。

1097話「ジニー」

• 起：くまとジニーの日常を通して、2人の親密さ（愛情）やお互いがかけがえのない存在になっていることを描く。
• 承：（くまとジニーが革命軍入りした後）ジニーが天竜人に攫われる。
• 転：くまは（自分達が天竜人の奴隷だった日のことがフラッシュバックし）抑えきれぬ怒りや焦りと共に、ジニーをまた同じ地獄に舞い戻すわけにはいかないと一人マリージョアに乗り込もうとする。（それをドラゴンらに止められる展開にするか、ドラゴン達も意を決してジニーを取り戻しに全面戦争を覚悟する描写を入れる）
• 結：そこにジニーから電伝虫で「助けに来なくていい」と連絡が入る。奴隷としてではなく天竜人の妻として迎え入れられたことから、自分はとても優遇されており、心配は不要であること。今までの貧乏生活ではなく、贅沢で華々しい生活ができていて、お腹いっぱい食べられるから自分は幸せであること。もう前のような貧乏生活には戻りたくないから、助けに来てほしくないこと。そして、くまちーとの結婚話はなかったことにしてほしいこと。

もちろんこれはジニーの嘘であり、ジニーは革命軍側の（今天竜人と戦争などできない・そんなことをしたらこれまでの全てが水の泡になってしまう）事情を知っていたから、嘘をついてでも突き放す必要があった。自分のせいで世界を変える組織を道半ばで崩壊させるわけにはいかない。自分一人犠牲になれば革命軍は存続でき、いつか天竜人を倒せる勢力に拡大できる。そう信じていたから、嘘をついて仲間達を突き放した。

くま達はもちろんその嘘に気づいていたものの、（革命軍として今天竜人と全面戦争をしても勝ち目がないことは事実であり）ジニーの覚悟を含めた嘘であることまで伝わっていたため、その想いを踏みにじることはできず、その言葉に従わざるを得なかった。

1098話「ボニーの誕生」

• 起：ジニーの連絡後、くまはいち早く革命軍の勢力を拡大して天竜人に戦争を仕掛け、ジニーを取り戻すべく無茶な働きぶりをしていた。（くまはジニーの覚悟を受け入れた上で、しかし1日でも早く奪い返すために必死に戦っていることを描く。ジニーの「心配はない」「おなかいっぱい食べられて幸せだ」という言葉を信じたい一方、そんなはずがないという不安に駆られながらジニーのことを想い、戦い続ける。約2年が過ぎた頃、ジニーから連絡が入る。病気になったからもういらないと捨てられて下界に戻ってきたと。しかしそれは別れの連絡で（自身が病気で変わり果てた姿を見られなくないため）くまとの再会は望んでおらず、自分はもうすぐ死ぬと伝えられる。
• 承：ジニーのもとへ急行したくまは、ジニーの変わり果てた姿を見て言葉を失う。2年前ジニーが攫われた時に、革命軍など捨ててすぐ助けに向かわなかったことへの後悔と、天竜人への怒りから、やり場のない感情を抑えきれずに絶叫する。顔を伏せた時、赤ん坊のボニーがいることに気づくも（憎き天竜人の子であることから）最初は思わず憎しみと怒りの目を向けてしまう。が、そんなくまに無邪気な笑顔を向ける赤ん坊を見て、その笑顔にジニーの面影が重なる（天竜人の子ではなく、ジニーの子でもあることをくまは理解する）。ジニーが命をかけて残したこの子を育てることが、自分の使命であると思い至る。
• 転：愛情をかけて育てる中で、ボニーがジニーと同じ病気にかかっていることが発覚する。くまは革命軍をやめ、ボニーのそばにいることを選ぶも、医者から10歳までしか生きられない事実を知らされ、途方にくれる。
• 結：それから1年後、「ベコリ王」が16年前のように国の足手まといを燃やしはじめたという報告が入る。

1098話も減ページゆえ、18ページあれば、「結」の部分は1099話の冒頭の内容を含めることもできるでしょう。1099話がどんな内容になるかわかりませんが、おそらくもっと引きとなる（1098話の「結」としてふさわしい）シーンがあるはずです。

実際、1098話の引きとして「ベコリ王がまた国の足手まといを燃やしはじめたという報告が入る」という情報では弱すぎるため、本来であれば（規定ページ数で描けるスケジュールがあれば）こんな引きにはなっていなかったでしょう。

上記のような描き方であれば、少なくとも私は、（そもそもジニーが天竜人に孕まされる展開にするべきかどうかは別として）まだくまや革命軍の行動にも一定の理解を示せました。

しかしそこを（規定ページ数であれば描けていたところを）完全に端折り、全て読者の想像に任せるという描き方をしています。

それがFILM REDの追加上映やらNetflixの2ndシーズンなどの外部仕事の影響によるものだとしたら残念でなりません。まじでそんなもんは原作が完結した後にやってくれと思いますが、実写版のキャストの加齢に伴うビジュアル変化を考えると、何年も放置するわけにもいかないでしょうから、おそらく今後、同作は原作にとって相当な足枷となっていくでしょう。