1041話「小紫」では、ビッグ・マム撃破後の以下のシーンが描かれます。
- モモの助とヤマトの会話。
- 雷ぞうvs福ロクジュの「炎上我慢比べ対決」が終了。雷ぞうが勝利。
- 五老星からのルフィ抹殺指示が入る。
- 小紫がオロチに正体を明かす。
- ルフィvsカイドウでルフィが「最後のギア4」を開始。
どれも内容としてはいいのですが、相変わらずセリフが説明的で不自然なため、作者の作為を感じてしまい、物語に入り込めません。
セリフを修正するだけで物語の質は一気に上がるのに、なぜ編集者は指摘しないのでしょうか…。
以下、詳しく解説します。
目次
1041話の問題点
モモの助のセリフが不自然で説明的すぎる
まずモモの助が、
- 「ロジャーや父達は最後の島で何を見て笑った!?」
- 「今ここにいても『開国せよ』と同じ様に言ったであろうか!?」
- 「拙者はおくびょうものか!?」
と3回も質問しながら、一人で延々としゃべりつづけるのが不自然すぎます。
この「相手に答えを求めていない独り言の質問」はドレスローザあたりから頻繁に使われているのですが、今後使用を禁止すべきでしょう。これが入るだけでセリフの不自然さが一気に増してしまいます。
「拙者 頭が悪いゆえ!!」「拙者はおくびょう者か!? ヤマト!!!」もいらない。そんなことわざわざ説明する必要も、確認する必要もありません。
「そんなことないよモモの助くん!!」って言ってほしいんですかね。気位の高い武士を名乗るなら、いい加減そんな女々しいセリフを吐くのやめたらいいのに。
これまでモモの助は「ビビりで泣き虫な普通の子供だけど、いざという時は勇気を振り絞って恐怖を乗り越え、男らしい発言をする」というシーンが何度も何度も描かれてきました。(ざっと数えただけでも、ゾウ編から8回以上あります)
しかし何度そうした「成長」を描いても、すぐまたメソメソするだけの弱虫なクソガキに戻るんです。
お前この前の発言や決意はどこにいったんだよ…とツッコみたくなるほど、同じことばかり繰り返す。
一度心に決めたのだから、その姿勢を貫けよ思わずにいられません。
意を決して威勢のいい言葉を吐いたかと思えば、すぐにただの弱虫なクソガキに戻る。この繰り返しがあまりにも多いため、いい加減辟易してしまいます。
「ロジャーや父達は最後の島で何を見て笑ったのか…かんじんの目的がわからぬのだ!!」
「もしワノ国の人たちが危険にさらされるなら 拙者は「開国」などしとうない!!!」
「教えてくれヤマト!! 父は今ここにいても『開国せよ』と同じ様に言うのであろうか!?」
このようにすれば、自然な「セリフ」になりますし、最後にヤマトに対して意味のある「質問」をすることができます。
「拙者はおくびょう者か!? ヤマト!!!」なんて確認して何の意味があるのでしょうか。
雷ぞうvs福ロクジュの「炎上我慢比べ対決」が終了し、雷ぞう勝利
1036、1038、1039、1040話と続いていた、炎の中互いに金縛りの術をかけ合うだけの我慢比べ対決の決着が、1041話にてようやくつきました。
こんなクソどうでもいい、誰も気になっていない茶番対決で、しかも「戦闘」とも呼べないただの我慢比べ睨めっこを、なんと5話にも渡ってお送りしてきたわけです。
ちなみに雷ぞうと福ロクジュが対峙したのが1009話、火事の中での戦闘が描かれ始めたのが1022話です。つまり1009話に戦闘が始まってから、合計32話もの間戦い続けていたことになります。
にもかかわらず、最後は福ロクジュがまる焦げになって終了という、何のひねりもないオチで決着。
この事実だけで、編集者がまともに仕事していないこと、機能していないことがわかります。
アニメが原作に追いついてしまうから、尺調整しやすい睨めっこシーンをたくさん挟んだんですかね。
こんなもの描くコマの余裕があるのなら、もっとルフィvsカイドウやキッド&ローvsビッグマムを丁寧に描けばいいのにと思わずにはいられません。
小紫がオロチに正体を明かす
小紫とオロチのセリフも違和感バリバリです。
オロチの「は!? なぜ!! 何を言い出す……!! お前はわしを好いているのだろう!!?」がいりません。
この期に及んでこんなアホみたいな質問をするなんて、不自然だと思いませんか。
「“海楼石”のクギを刺した理由」を確認するシーンなんですから、「好きか嫌いか」の問題じゃないでしょう。「敵か味方か」がまず気になって言葉に出るはずです。
小紫の「好きとは滑稽な…好意のかけらもありませぬ」はキレ味があって悪くないんですが、このセリフを言わせたいがために、オロチに「お前はお前はわしを好いているのだろう!!?」と言わせてるわけですね。
こういう「その後に言わせたいセリフを引き出すためだけの前振り質問」も即刻なくしたほうがいい。
オロチというキャラクターが自分の口から吐いたセリフではなく、尾田先生に「言わされた」セリフにしか見えず、感情移入できなくなるからです。
その後のオロチのアホ面もやりすぎです。
「……へ…!?」じゃねェよ。
「“海楼石”のクギを刺したのはあちきでありんす……」と言われてる時点で、敵意を持たれてることがわかるんだから、その上での会話を描くべきでしょう。
まるで想像もしていなかったようなアホ面をさせると、一気に茶番になってしまいます。
その後の、
「私の父 『光月おでん』が愛した曲でありんした」と「笑顔になどなれましょうか」は、不気味さが出てていいんですけどね。
その前のオロチのリアクションやセリフが不自然でリアリティがないため、すべて台無しになっています。
ここのシーン、
「“海楼石”のクギを刺したのはあちきでありんす……」
「な、なんだと…!!? 冗談はよせ小紫!! 貴様はわしの味方だろう!!! 早くガレキをどかせ !!」
「味方とは滑稽な…20年前から
お前を殺すために生きてきたというのに」
って感じにしたほうが、ゾクっとして緊張感のあるシーンになったと思いませんか。
その後、オロチには
「な…何を…!!?」
と(アホ面ではなく)脅威の表情をさせる。
小紫は淡々としゃべり続け、
「くしくも…ぬしが好きな曲『月姫』は」
「私の父 『光月おでん』が愛した曲でありんした」
と正体を明かす。
それに対して
「….!!? 父!?」
とオロチに驚愕の表情をさせればよかった。
最後のセリフは難しいですが、もっと恐ろしく描くのなら「この日を待ちわびた」とか「お前がこの曲を聴けるのも 今日で最後だ」のようなセリフでもいいでしょう。
ただし、
「笑顔になどなれましょうか」
というのは、おそらく小紫がこの曲を弾くときに仮面をつける理由の説明になっているので、変えない方がいいかもしれません。
いずれにせよ、無駄な雑音を取り除くことで、グッと迫力のあるシーンになったはずなんです。
ルフィvsカイドウでルフィが「最後の攻撃」を開始
最後はルフィvsカイドウのシーン。
カイドウがルフィに向かって「気づいたか!? オイ」と話しかけるんですが、いや、お前ら友達かよ。
ここは普通にカイドウが(見聞色の覇気で)「!!?」と気づき、「リンリンが…やられた…!!?」のように脅威の表情で独り言を吐かせればいい。
その声がルフィに聞こえてルフィもビッグ・マムがやられたことを認識する、という描き方でいいじゃないですか。
わざわざ大声でルフィに質問して確認するなんて違和感しかありません。
もっと細かい点で言うと、その後の回想シーンのビッグ・マムのセリフ、
「もしもし〜〜〜〜? 喋れんのか?」もいらない。
どんな状況で話しかけてるのかわかりませんが、ビッグ・マムは「もしもし〜〜〜〜?」とか言うキャラじゃないでしょう。ダサすぎる。
その後、ビッグ・マムの敗北を知ったカイドウは、
泣きます。
これもいらない。
どうしても「○○上戸」を出したいなら、「怒り上戸」でいいじゃないですか。
なぜこの緊迫した戦闘の最中、わざわざギャグシーンのように泣かせて「泣き上戸(べべん!!)」なんて説明を加える必要があるのでしょうか。
もう雑音でしかありません。
最後のルフィの決め台詞もしゃべらせすぎな上、ダサすぎてまったく締まらない。
まず「お前らの野望なんか関係ねェ!!! それでまた この国の奴らがメシ食えなくなるんだろ!?」がいらない。
攻撃中なのにしゃべりすぎだし、説明的すぎるし、「○○なんだろ!?」と一方的に投げかけるだけの質問セリフも違和感しかありません。
「相手の答えを求めていない独り言の質問」のせいでセリフのテンポが悪くなり、不自然さが増しています。
またカイドウたちの「野望(ワンピースを奪りにいく)」と「この国の奴らがメシ食えなくなる」というのは直接的にはつながらないため、その意味でも違和感があります。
ワンピースを奪りに行くには「ワノ国」を離れなきゃいけないんだから、むしろカイドウがいなくなってメシが食えるようになるのでは?
すでにカイドウの部下達をはじめ、ビッグ・マムまで撃破してるんだから、仮にカイドウ1人が生き残ってワンピースを奪りにいくとしても、「この国の奴らがメシ食えなくなる」とはつながらないと思うんですよね。
もちろん、カイドウが海賊王になったらワノ国の支配は続くでしょうから、その野望が「この国の奴らがメシ食えなくなる」につながるのはわかります。でもそれってルフィの夢が潰えることでもあるわけですから、ワノ国のメシ事情など気にしてる場合ではありません。
さらに言うと、四皇が「ワンピースを奪りにいく」って言ってるのに、「お前らの野望なんか関係ねェ」と言い捨てて、ワノ国のメシ事情を優先しているのもおかしい。
ワンピースを手に入れるのはルフィの夢で、そのために「四皇は全員おれが倒す」と息巻いていたはずです。その四皇が本気でワンピースを「奪りにいく」と言ってるのに、「関係ねェ」はないでしょう。。
「ワンピースはおれのもんだ!!」とか「お前らなんかに渡してたまるか!!」と返すのがルフィではないでしょうか。
なぜか急に「カイドウと戦っている理由=ワノ国のメシ事情を解決するため」という点をクローズアップしてくるのです。
「ルフィはお玉達に腹いっぱいメシを食わせてやりたくて、カイドウと戦ってるんです(お玉との約束をちゃんと覚えているんです)」という不自然な「説明」を加えた結果、戦いの目的がブレ始め、違和感だらけのカッコつかないセリフになってしまいました。
この辺りも編集者が指摘しろよとしか思えません。
カイドウの「どこからパンチが……!!!」もいらない。説明的過ぎるし、ルフィの決め台詞の邪魔をしてテンポを悪化させ、キレ味を削ぐ雑音になっています。
そして最後の
があまりにもダサい。「絶対にィ!!!」がダサすぎるし、決め台詞として弱すぎます。
「お前だけ」と限定することで、「あれ、じゃあビッグ・マムは追い出さなくていいの?」となりますし、「追い出すだけでいいの? 倒すんじゃないの?」という疑問も浮かんでしまう。
だから締まらない。
疑問の残るような違和感のあるセリフでは、決め台詞にならないのです。
錦えもんの意志を受け継いだんだから、
「お前をここから追い出して おれがワノ国を開国してやる!!!」
とか、いよいよ「四皇」を追い詰めるところまで来てるんだから、
「お前は絶対におれが倒す!! ワンピースはおれのもんだ!!!」
とか
「海賊王になるのはおれだ!!!」
くらいのこと言ってほしいんですよね。
「お前はだけは絶対にィ!!! 『ワノ国』から追い出してやる!!!」
って決め台詞としてダサすぎると思いませんか?
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名作でもよく読みこめば、確かに変なセリフもあるんですね!
勉強になりました。
あくまで私個人の意見ですが、
真剣な場面でアホヅラを晒したり、闘いの最中にギャグシーンが入るのが、
ワンピースの個性、他の作品との違いなのではないでしょうか…
そういう「抜けた」コマも混ぜることで、本当に強調したいシーンがひとしお際立っているのだと思います。
長文にて失礼しました。
初めて記事を読まさせて頂きました。
とても面白かったです。
ワンピースを読む中での違和感が上手く言語化されていて納得できました。
改善案の部分に
「味方とは滑稽な…20年前から
お前を殺すために生きてきたというのに」
とありますが、二人称の統一を考えると
お前→ぬしの方が良いのではと思いました。
今回も楽しく記事読ませていただきました。
どれもごもっともなご指摘ですね。
記事を読んでいてふと思ったのですが、そもそも海賊王になるってどういうことなのでしょう。ワンピースを見つけ出すこととイコールなのだとすれば、別に敵と戦う必要なんてないのではと思いました。
確かに競合だから潰すというのは理解できるのですが、目的と手段が逆になっているような。。今この瞬間にも何者かがワンピースを見つけてしまっているかもしれないのに彼らはあまり焦らないのでしょうか。
もしこのことについて既に作中で言及されていたとしたら申し訳ございません。
バトル漫画にこんなことを言うのは野暮だとわかっておりますが100巻を越えて未だにワンピースの正体が何なのか判明していないって、ずいぶん勿体ぶるなぁと感じた次第です。
ワンパターンすぎますよね。。日和の生き方はまだ理解できますが、おでんが国民のために裸踊りをして、最終的に裏切られて死ぬという展開は全く受け入れられませんでした。
国民のために辛い目に遭う父親と本来の自分を偽って敵に立ち向かう娘…流石にワンパターンだと思うんですが…
水戸黄門みたいなものだと思うべきですかね